従業員の健康も企業財産?!今注目の「健康経営」とは?
2019年10月01日
長時間労働などによって心身の不調を訴える人が増え、仕事のストレスがきっかけで発症するうつ病や、オーバーワークによる過労死が近年の社会問題となっています。
そこで政府は2013年6月、「日本再興戦略(JAPAN is BACK)」を閣議決定。その中の、「戦略市場創造プラン」のテーマとして「国民の健康寿命の延伸」を取り上げ、「2030年のあるべき姿」と「個別の社会像と実現に向けた取り組み」が提示されました。
それらに基づきスタートしたのが現在注目されている「健康経営」です。
なぜ今「健康経営」なのか
健康経営とは、「企業が従業員の健康を個人任せとせず、健康施策を戦略的な活動と捉え、投資を行い、従業員の活力向上や労働生産性向上などの効果を期待する」というものです。
簡単にいうと、「企業が運動や食事補助などの活動で従業員の健康維持に協力すると、企業にとってもメリットがある」という考え方です。
これは少子高齢化による労働人口減少がおおきな背景となっています。
企業が従業員の健康維持に務めると、従業員の労働生産性が向上するほか、ストレスによる「うつ病」などの発症リスクを下げることができます。
さらに、高齢化によって国全体の医療費負担が増大している現代では、現役世代の病気予防は医療費削減のための重要なポイントといえます。
「健康経営」のメリット
健康経営に取り組むと従業員個人はもちろん、企業にも様々なメリットがあります。
健康経営を行ううえで欠かせないのが従業員の生活習慣や食生活のチェックと指導ですが、これらをきっちり行うと生活習慣病の予防と改善に繋げることができます。これまでは定期健康診断の結果を見た従業員個人だけが努力するという方式でしたが、健康経営では企業と従業員が二人三脚で健康に取り組むということですね。
また、健康状態を把握することで個人が抱えている問題を早期発見・改善することができます。
例えば、特定の曜日に体調を崩して早退することが多い従業員がいる場合、その曜日になんらかの精神的なストレスを感じ、出社拒否症のような症状が出ているのではないかと考えることができます。
そのまま放置していると症状が重くなり、本格的な出社拒否症やうつ病になる可能性があるほか、退職してしまうかもしれません。
また、体の一部を酷使する仕事に従事している従業員の場合、いわゆる「使い傷み」が発生しているかもしれません。
このような状態のときは「その部分をできるだけ使わないこと」が早期回復のカギとなりますが、シップや痛み止めで誤魔化しながら仕事を続ける人も少なくありません。これでは症状が治るどころか悪化することもあります。
いずれの場合も、できるだけ早い段階で仕事内容の見直しや労働環境の見直しを行うと、早退がなくなったり、作業スピードが上がったりするなど生産性を高めることができます。
健康経営の取り組み方
健康経営の取り組み方は様々ですが、近年増えているのはスマホアプリを活用した顕彰制度です。
これは、「エクササイズ5分」「一日の歩数5千歩以上」「禁煙」など、健康によい習慣がアプリ内に登録されており、実際に取り組んだ習慣をチェックすると内容に応じたポイントがたまるというものです。
貯めたポイントは電子マネーなどに引き換え可能で、モチベーションを維持しやすいのが特徴です。
また、医療機関やフィットネスクラブと提携して病気予防や運動に乗り組みやすいようにする、フレックスタイムを導入することで病院を受診しやすくするなどの取り組みを行っている企業もあります。
もっとも手軽な取り組みは「昼食の見直し」
社員食堂などで昼食補助を行っているのであればメニューの栄養バランスを見なおし、より健康的な食事を提供してみてはいかがでしょうか。
アプリの導入や社内独自の顕彰制度などを導入するのに比べるとコストや手間をかけずに健康増進に取り組めるだけではなく、「健康的でおいしい食事が食べられる企業」ということで企業価値が高まり、人手不足解消や従業員の定着率アップなどに繋がる可能性があります。
また、昼食補助を行っていない企業の場合、導入コストをかけずに省スペースで美味しい食事を提供できる出張食堂の利用検討してもよいでしょう。
栄養士監修の元、労働環境や従業員の年齢層などに合わせた食事を提供することができます。
まとめ
従業員が元気に働くことができる企業作りは、今後減少し続ける労働人口減少や、労働人口減少と高齢化による生産力低下の対策として非常に重要となります。
「健康問題は個人の問題」と考えるのではなく、健康的な活動を習慣づけしやすいような制度を設けたり、昼食補助の内容を見直したりする「健康経営」で従業員の健康を後押しできるとよいですね。