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噛む力が弱まると考えられる病気リスクとその対策について  

近年、高齢者だけではなく子どもでも「噛む力が弱まっている」といわれており、専門家の間では「深刻な健康被害の恐れがある」ともいわれています。

噛む力が弱くなるとどのような問題が起こり、どのような病気リスクが高くなるのでしょうか。

噛む力が弱まることによるリスク

食べ物をしっかり噛むと消化がよくなるだけではなく、脳の満腹中枢が刺激されて食べ過ぎを防ぐことができます。

また、噛むと顎や口周りの筋肉が動くため、脳に流れる血量も増えて脳神経が刺激されます。脳が活性化して認知症予防になるだけではなく、視力やIQにも影響するという実験報告があるようです。

さらに、噛むと唾液腺が刺激されて唾液の分泌が活発になるなど、噛むことによるメリットは数多くあります。

噛む力が弱まると、噛まずに飲み込むことで胃などの消化器官に負担をかけてしまうため、胃痛が起こったり消化のために胃酸が多くなって「胃潰瘍」になったりする可能性があります。「胃がん」のリスクが高まるともいわれているほか、食べ過ぎからメタボになる可能性もあります。

飲みこむ力も弱くなっている高齢者の場合、誤嚥による窒息事故や「誤嚥性肺炎」のリスクも高くなります。

また、唾液の分泌量が減ることで飲み込みづらくなる「嚥下障害」になるだけではなく、唾液がもつ殺菌作用が不足することで「虫歯」や「歯周病」のリスクが高まり、歯の欠損にも繋がります。

歯がなくなったり顎の筋力が弱まったりするとさらに噛まなくなり、「オーラルフレイル」という状態に陥るかもしれません。

オーラルフレイルとは

オーラルフレイルとは、口から食べ物をこぼす、ものがうまく飲みこめない、滑舌が悪くなるといった口の衰えを指す言葉で、高齢になることで筋力や精神面が衰える状態である「フレイル」の前段階といわれる状態です。

オーラルフレイルになると摂取する食品のバリエーションが減って栄養バランスが崩れたり、低栄養状態になりやすいだけではなく、食べる楽しみがなくなることで食欲減衰や意欲低下します。

さらに、滑舌が悪くなったり口が乾いて口臭が強くなったりすると、人とコミュニケーションを取るのが億劫になる、不安を感じるようになる原因になります。

オーラルフレイルはフレイルを加速させ、高齢者の健康寿命を縮める原因となりますので、予防と改善が非常に重要となります。

噛む力が弱まったときの対策

噛みごたえがある物を食べる

噛む力が弱くなると「しっかり食べられるように」という気持ちから柔らかいものばかり食べがちになりますが、噛む必要がない柔らかいものばかり食べていると噛む力はますます弱くなります。

柔らかいものばかりではなく、歯ごたえがある食品を積極的に食べて噛む力を鍛えましょう。

口の運動

顎の筋肉や舌の動きを滑らかにする運動や、唾液の分泌をうながす運動を行うことで口周りを鍛えると食べづらさを感じにくくなります。

まとめ

噛む力が弱くなったと感じたときは、低栄養を防ぐために柔らかくて食べやすい食事に切り替えて対応しますが、柔らかすぎると噛む力がどんどん衰えてしまいます。

食事の柔らかさを決めるときは、その人の噛む力にあった柔らかすぎない食事を提供しましょう。